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2015-09

「巨匠」という人。 - 2015.09.12 Sat





このクソジジィの訃報を聞かされたのが
27歳になる前日のことでした。



昔から、呑んで酔ったら電話が来る。
「明日美おめー、なぁにしてんだ?」って。
『どーせまた呑んでんでしょ。呑まなきゃ電話できないんでしょ、知ってますよ』
言い返せば少し笑って必ず「うるせえ」と呟く。

皮肉な意味で“巨匠”と呼ぶようになった。
「巨匠じゃねぇ!ただの呑んだくれ親父だ!」って怒るのが面白くて。

育てた歌手、アーティストたち、
みんな自分の子どものように思う人でした。
「娘みたいなもんなの。だから彼氏のツラ見せに来いよ、俺が吟味してやるから。」
『なにを偉そうに』とか言いながらも二度ほど緊張したもんです。
父親に会わせるようなものですから。





いくつかのネットのニュースが
“音楽プロデューサー 鈴木健士さん 急逝 54歳”

先月の誕生日の朝、
LINEのニュースに出てきたときにやっと『ああ、』と思えたような。

『でもあれ名前、“健二”じゃなかったっけなあ。
「漢数字の二だ」って、言ってたような気がしたんだけどなあ。』
『54歳って、若いなあ。』
そんな、他人事も思いながら。

この写真も以前、見ながら『おじーちゃんみたいっすね。』って言ったら
「うるせぇガキ!!!」って大声で怒られたんだ。





「俺がくたばるまで付き合え。そんで焼き場で泣け。」
『こんがり焼けた巨匠が出てきたら、
骨を一本一本拾いながら丁寧に外にぶん投げますよ。』

そんな酷いこと言ってたけど報せが来たのは、
こんがり焼けて冷め切った後でしたね。



9/10に巨匠のお別れ会に青山まで行きました。
そこには巨匠の縁で出会った人たち、アーティストたち、音楽家たち。
久しぶりと、懐かしんで笑いながら。



そうか、もう27になるのか、
ちょうどぴったし10年前なんだなと
ぼんやり思いました。
出会ってたったの10年でおっ死んで、
なにいろんなニュースに載ってんだって。
そんでなんかこう、端的に書いてあってさ。
あんなガサツで暴れん坊なおっさんが美化されているようでって、
未だに憤りしかないですね。





10年前、巨匠は林 明日香ちゃんという歌手を売り出していた頃でした。

デビュー曲の「ake-kaze」を、友達がカラオケで歌っていたのを聴いてから大ファンになった。
Mステやらなんやら、大々的に音楽番組に出ていて。
そのプロデュースと作詞をしたのが巨匠でした。


明日香ちゃんにファンレターを送ったことがきっかけで
17歳になる年の3月、明日香ちゃんのCDジャケットを描きました。
明日香ちゃんが中学を卒業することを区切りとしたミニアルバムのジャケットです。

初めは歌詞ページの挿絵にという話だったんですが
全部描き終わって、「ジャケットにすることにしました!」とメールが来たときは飛び跳ねて喜びました。


当時明日香ちゃんのマネージャーだった吉川さやかさんとの電話とメールのやりとり。
何度も描いて郵送して。累計20枚くらい。

さやかさんが優しく指示をしてくれた裏で、
ダメ出しをしまくって描かせていたのは事務所の社長でもある巨匠だったと後から聞きました。

冬休みの宿題と補講とバイトもあって忙しい年越しだった。
当時から今でもこの名コンビにお世話になっていました。



『絵描きになりたい』と思うきっかけだったんですよね。
後にも先にも、これが全ての根源だった。

未だにね、あるんですよ、
レンタルショップに行くとそのCDがあるんです。
あ、ちゃんと遺ってる って恥ずかしくなるんです。
だって本当に拙い絵。しかも下手くそなイラスト。
でも本当に嬉しかった。
今でもずっと宝物。



初めて巨匠に会ったのもその夏だったと思います。
明日香ちゃんが24時間TVのチャリティーライブのため、名古屋に来ていたとき。

巨匠を紹介されたときは『(ヤバい、この人絶対ヤクザだ)』と思う他なかった。
ただただ怖かった。顔が。鬼軍曹みたいな顔して。眉毛ないし。
立派な福耳が不釣り合いな顔をした人だった。

でもね、そのライブが終わって
人混みの中 明日香ちゃんの出待ちをしていたら巨匠と目が合って『(あ、殺される)』と思っていたら
「来ちゃいなよ。」と、明日香ちゃんに会わせてくれました。
ビビりながらもどこのジャニー喜多川かと思った記憶があります。






“すぐに切れるような縁だと思ってた”と、
巨匠に出会った人みんな口々に言うんです。
わたしも含めてね。

「俺自身には才能がないけど
人と人を出会わせる才能が俺にはあるし、それが天命だ」って。

10年経った今でも、みんながちゃんと繋がっていたのは巨匠のお陰だと
みんなが感じていることです。



巨匠は初めからずっと わたしを明日香ちゃんの一ファンではなく
“一 アーティスト”として厳しい目で見ていてくれました。

わたしにとってそれはとても貴重で、唯一の存在で。
唯一、厳しいことを言ってくれるオトナだった。

でもそれを巨匠には言いたくないんですよね、“ありがとう”なんて。
サムイし。小っ恥ずかしいし。ドヤ顔されるのも超絶腹立つし。
だから作品に対して何か言われれば
『うるせークソジジィ!早くくたばれ!!』「うるせークソガキ!」と言い争った。




そんな中で忘れずに取っておいたものがありました。

5年前、22歳の頃にいきなり渡されたこの変な木。







「ここにお前にとっての“曼茶羅”を描け。
いつになってもいい。
今のお前なら10年はかかるだろうな〜」

巨匠はきっと覚えてないでしょうけど。
わたしはいつ描けるのかななんて、思っていたのです。







最後に出会わせてくれたアーティストは紗由里ちゃんでした。

ちょうど一年程前に、“村上 紗由里”というギター少女を紹介されました。
『またなんか拾ってきたんすか。』
「紗由里って言うんだけどな。お前と似てんだよ。会わせたいから東京に来い」
そうやって、新しく伸びていった縁。


昔からよく そうゆう歌手志望の子を拾ってきては
静かに育てていた印象があります。
とりあえずすぐ拾ってくる。
昔人間ドックで医者に「聴力が犬並みです」と言われた巨匠です。
なんでも楽しそうに咥えて拾ってくるのも犬みたい。





最後に巨匠に会ったのも、3ヶ月前の紗由里ちゃんのレコーディングだった。

9時間にも及んだレコーディングの終わりに
スタジオの向かいの中華屋で、
巨匠とさやかさんと紗由里ちゃんで晩ご飯を食べて。
渋谷の改札で「またな。」と手を上げた姿。


亡くなる9日前。
土用の丑の日、7月24日。
グルメな巨匠に地元で有名な三河一色産の鰻を送ったとき
「届いた!」と嬉しそうなメールが来て、
それがわたしとの最後となりました。








「明日香のガキも抱けたし、後はオメーのクソガキと、紗由里のアホガキでもう打ち止めにするわ」



後悔なんてものは我が儘なもんで。
亡くなった人になんやかんや思ったりとか、
亡くなったからこうしたいだああしたいだとか、勝手なもんだよなって思うんです。

勝手なことを思う前にする前に
亡くなった人がそれを望んでいたのか否かって考えるべきじゃないのかって。
何を主としてそれをやろうとしてんだって考えるべきで。
って、巨匠が死んで学んだことです。

だから後悔を思う度に、なんて自分勝手な人間なんだと反省するくらいで。
それに後悔をすれば、あの世で「ざまあみろ」って笑ってると思うと悔しくて。


だからこんな長々と綴られるのも嫌いだろうから、
いきなり逝きやがってと長文で悪口書いてやろうと思っていたのに
本人がいないと、なかなか書けないもんですね。





年月だけ見れば長い付き合いになりますが、
実際に会っている時間はとても少ないものだったのでしょう。
「お前こっち来てたの?言えよ!」ってよく言われたものです。


だから東京に行くときは、西麻布の事務所にも遊びに行くようになりました。

駅から歩くと割と長い一本道。
坂ばっかで、夏は蒸し暑くて。
どこかで左に曲がるんだ、どこだっけ…。

方向音痴のせいでいつまで経っても覚えられなかった。
さやかさんが、帰りに事務所を出てからのわかりやすい地図を書いてくれたことがあった。
出て5分で迷って巨匠に呆れられた。
次行くときはたぶん迷わず行ける!と、思っていたところでした。



事務所に行くと必ず、
巨匠が関わっている音楽たちをパソコンで流しながら話してくれました。
『ふーん』って、聴いてるだけでほとんど覚えていないんですけどね。音楽ってわかんないし。

「どうだ、この曲」『へぇーえ』 って。

でも、次から次へと流してくれた。
音楽はわかんないけど、巨匠はとても楽しそうだからいいやって。


だからわかんないけど 、
お疲れ様でした クソジジィ 。






「 “明日美”。 明日も美しくあるように、か。」


「今は悩まずに進めよ、バカ娘」



「なんかあったら、俺が命がけで助けてやるよ。」









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絵描人0084。(エカキビト オオハシ)
愛知県西尾市生まれ
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